膝の痛みで水が溜まる時に抜いてはいけない3つの理由

当院にご来院される色々な症状の患者さんの中には、膝が痛くて水が溜まると言う方もいらっしゃいます。

そういった患者さんからは、「膝の水を抜いてもいいのか?」というご質問をいただくことが多いです。

これの答えは、なるべく水は抜かない方が良く、それにはきちんとした理由があります。

今回のブログでは、膝の痛みで水が溜まる時に抜いてはいけない理由を「3つのポイント」にまとめてお伝えします。

膝の痛みで水が溜まる時に抜いてはいけない3つの理由|今治市 星野鍼灸接骨院

 

膝の痛みで水が溜まる原因は?

膝関節

膝関節は、太ももの骨とふくらはぎの骨とが繋がっており、その前には一般的に「お皿」と呼ばれる膝蓋骨で構成されています。

その3つの骨は関節包と呼ばれる大きな袋に包まれていて、骨の表面は関節軟骨で覆われています。

また、その骨と骨の間にある膝の動作に合わせて動く軟骨が半月板です。

この関節包の内側に滑膜という膜があり、そこから関節液という水が出て、関節包内を満たしています。

関節液の働きは、関節を曲げ伸ばしする時に関節軟骨や半月板などがクッションの働きをするのですが、関節液はそのクッション部分にかかる負担を減らすための潤滑剤の役割をしてくれます。

また、関節液を分泌する滑膜も滑りやすいツルツルした成分でできていて、こちらも同じようにクッションや潤滑の働きです。

このクッションがあることで、スムーズに関節の曲げ伸ばしができるのですが、この時に体重がかかったり・捻ったりして過度の負担がかかってしまった時に軟骨部分に損傷が起こる場合があります。

負担がかかると傷ができて軟骨片が飛んで滑膜が刺激されたりして、通常よりも多く潤滑剤である水(関節液)が出てくるのですが、それは、関節の炎症を抑えたり動きを良くするためです。

膝の痛みで水が溜まる時も抜いてはいけない3つの理由

関節包に収まりきらない程の水がでると、膝全体が腫れて痛みが出てくるとともに、膝を曲げ伸ばしする筋肉に力が入りにくくなり、上手く曲げ伸ばしができなくなります。

腫れにより膝の曲げ伸ばしがしづらくなるため、病院では中に過剰に溜まった水(関節液)を注射器で抜く処置を行うことが多いです。

水を抜いて関節の腫れが少しマシになると、曲げ伸ばしや痛みが軽減するため、動きやすくなりますが、いくつかの問題点もあります。

①滑液(関節液)は炎症を引かせるために必要

関節の動きを良くするため出てくる滑液は、もともと関節の中に3mlほど溜まっています。

滑液の働きは潤滑だけでなく、炎症を引かせるために必要な水としての働きもあります。

動きすぎや関節に負荷がかかるとだんだんと動きが悪くなり炎症を起こすため、炎症を抑えようとたくさん水が出ます。

そういった理由で水が溜まっているで、水を抜いてしまうと炎症が引きにくくなったり潤滑が悪くなってしまいます。

なので、注射で抜いた後には消炎鎮痛剤をいれたりヒアルロン酸を入れる場合がほとんどです。

もちろん、腫れがひどくて歩けないほどであれば溜まり過ぎた水を抜く方が早く楽になるというメリットがあります。

ただし、元々あるもので炎症が引くなら、そのままの方が負担が少ないため、なるべく水は抜かないほうがいいということです。

②炎症の起こっている滑膜に針を刺すため

2つ目の理由は、炎症が起こっている所に針を刺すと炎症が酷くなるためです。

元々関節に溜まっている水(滑液)は、滑膜に刺激が入ることで潤滑剤である水を出して、関節が動きやすい状態にしています。

無理な動作が続いて軟骨片が飛んだりして、滑膜に過度な刺激が入り炎症が起こると、多くの水を出しているのですが、炎症が出ている滑膜自体に、針を刺す刺激を与えることで炎症がひどくなることが考えられます。

また、もう一点は感染リスクがあることです。

針を刺す時に関節の中まで針を入れるのですが、関節の中はもともと外の世界と隔離されています。

体の中で細菌やウイルスがない清潔な所に針を入れることで傷ができ、感染してしまうリスクはどんなに消毒をしてもゼロではないのです。

③繰り返し水が溜まるのを防ぐため

3つ目のポイントは、注射をして動きやすくなるからこその注意点とも言えます。

関節に水が溜まり水を抜くというのを時系列に説明すると、

①関節に負荷がかかる
②水が溜まって腫れる
③水を抜く
④腫れが減って動きやすくなる

という流れです。

この動きやすくなる時に、どうしても動いてしまうことが多くなります。

ここでのポイントは、水を抜いても炎症が引いて治ったのではなく、例えるなら、風邪薬を飲んで熱がひいても風邪が治ったのではない事と同じです。

動き過ぎる→負担がかかる→炎症が広がる→水が溜まる→抜く→動いてしまう→負担がかかる→水がたまる・・・

これを何度も繰り返すということは、軟骨や骨に過度の負担がかかり、変形しやすくなってしまうリスクが増えてしまうのです。

まとめ

①水は、本来炎症を引かせるためのもの
消炎鎮痛剤を入れるより身体の負担が少ない為、無理に水を抜かなくても良い

②針を刺すことによる感染リスクがある
炎症が出ている滑膜に針を刺すと炎症を酷くさせてしまう為、なるべく刺激を与えない方が良い

③水を抜くと腫れが減って少し楽になる
筋肉の緊張が取れ負担が減る分動いてしまうが、これは炎症が引いているわけではない
水が溜まる→抜くを何度も繰り返すと変形や傷が大きくなってしまい治りが遅くなる

以上の点から、膝の負担が増えるので、無理に水を抜かない方が良いということになります。

(鍼灸師・あんまマッサージ指圧師・柔道整復師 星野泰隆監修)

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